こちらは、クロニンジャーの7因子パーソナリティ理論のまとめページです。
どういう人が摂食障害になりやすいのか。
これまでに【人格形成】クロニンジャーの7因子パーソナリティ理論を基に説明してきましたが、
このページで一度まとめておきますので、どうぞ自己分析にお使いください。
7因子は
無意識の【気質】4つ と
意識的な【性格】3つ によって成り立つ
- 気質・・・行動との関わりが強いものです。遺伝なので、変えることができません。
- 性格・・・生まれたのちに構成されるもので、概念的に操作できると言われています。
気質
行動の触発・新奇性追求(冒険好き):NS
| 特徴 |
行動の活性化と開始に関する遺伝的傾向性 |
| 関連する神経伝達物質 |
ドーパミン |
| この因子が高い人 |
新しもの好き・おしゃべり・不規則な行動・衝動的・探索的・気まぐれ・飽きっぽい・興奮しやすい・怒りやすい・浪費家である |
| この因子が低い人 |
頑固・禁欲的・規則正しい・新たな物事にゆっくりと取り組む・関心が狭くなりやすい・行動する前にじっくりと考える |
簡単に説明すると、火がつきやすい人か、つきにくい人か、という感じです。
抑制・損害回避(心配性):HA
| 特徴 |
行動の抑制と中止に関する遺伝的傾向性 |
| 関連する神経伝達物質 |
セロトニン |
| この因子が高い人 |
心配性・内気・悲観的・用心深い・緊張している・予期不安を持っている・怖がり・疲れやすい |
| この因子が低い人 |
リスクを好む・外向的・楽観的・自信に満ちていてリラックスしている・無責任・社交的・活動的 |
簡単に説明すると、自制心が強いか、弱いか、という感じです。
維持・報酬依存(人情深い):RD
| 特徴 |
進行中の行動の維持と持続に関する遺伝的傾向性 |
| 関連する神経伝達物質 |
ノルアドレナリン |
| この因子が高い人 |
共感的・情緒的・感傷的・他者を喜ばそうとする・心情的・最終的な報酬のために期待を持続することが出来る |
| この因子が低い人 |
孤立・冷静・感傷的でない・短期的な報酬が得られない場合にすぐに飽きてしまう |
※ここでいう報酬というのは、社会的な愛着に関するものです。
簡単に説明すると、褒められると続く人と、続かない人がいる、といった感じです。
固着・固執(ねばり強い):P
| 特徴 |
行動の固着に関する遺伝的傾向性 |
| 関連する神経伝達物質 |
不明 |
| この因子が高い人 |
完璧主義・熱心 |
| この因子が低い人 |
適当・飽きやすい |
※報酬依存に似ていますが、物的な報酬に関するものです。
たまに物的な報酬を与えられることで、忍耐強く一つの行動を行う、一つのことをやり通すという性格です。
ココまでが、生まれ持った気質になります。次にあげるのが、生まれた後につくられる性格です。
性格
自己志向性(自尊心のことです):SD
自己決定や意志の力、選択した目的や価値に一致する状況に適合するために行動をコントロール・調整し、そして選択する個人の能力。自分に関する能力です。これが低いと何らかのパーソナリティ障害になりやすいとされます(後述)。
| この因子が高い人 |
責任感があり、目標を設定しそれに向けた行動を選択でき、選択した行動を可能にする能力を持ち、 自分で選択した行動に自分を動機づけることができる。 |
| この因子が低い人 |
責任感が低く、目標に向けた行動を取ることができず、自尊心が低く、自己奮起できない。
|
発達の過程>>
①自己責任(対・他者避難)②目的指向性(対・目的指向性の欠如)③臨機応変,問題解決におけるスキルや自信の発達④自己受容⑤第二の天性を啓発すること。
協調性(人類社会の統合的部分のことです):C
他人と同一化し、受容する際の個人差を説明する因子。協力性や共感性はしばしば発達心理学において、成熟のサインとみなされる。
| この因子が高い人 |
社会的に寛容・共感的・有用・同情的 |
| この因子が低い人 |
社会的に不寛容・他者に無関心・役に立たない・執念深い |
発達の過程>>
①社会的受容性(対・社会的非寛容)②共感(対・社会的無関心)③協力(対・非協力)④同情心(対・復讐心)⑤純粋な良心(対・利己主義)
自己超越性(全体としての宇宙の統合的部分):ST
統一された全体の本質的必然的部分として理解される全てのものとの一体化、全てのものは全体の部分であるという統一意識。
こちらは摂食障害に直接関係がないとされていますが、個人的にはこのあたりの部分まで掘り下げてほしいかな~と思っています。
発達の過程>>
①自己忘却(対・自己意識経験)②霊的現象の受容(対・合理的物質主義)③超個人的同一化(対・自己弁別)
この尺度によって測定される現象は、とくに35歳以上の成人にとって、その人の適応状態と人生の満足度を知るうえで重要です。
パーソナリティ障害を特徴づけている気質因子の組み合わせ
クロニンジャー博士はパーソナリティ障害を特徴づけている因子として組み合わせを上げています。
| パーソナリティ障害 |
新奇性追求 |
損害回避 |
報酬依存 |
| 演技性 |
○ |
× |
○ |
| 反社会性 |
○ |
× |
× |
| 自己愛性 |
○ |
○ |
○ |
| 境界性 |
○ |
○ |
× |
| 普通の生真面目な人 |
× |
× |
○ |
| 統合失調質 |
× |
× |
× |
| 回避性 |
× |
○ |
○ |
| 強迫性 |
× |
○ |
× |
気質を測定する4番目の尺度としてTCIに加えられているのですが、元来この固執尺度は、報酬依存の1つの下位尺度(RD2)としてTPQでも測定されていました。
気質を3次元で測定するのか、4次元で測定するのか、については、Stallingsらが双子のデータを用いて詳細に検討し、固執尺度は、他の報酬依存の下位尺度との相違が低く、また、因子分析の結果からも固執尺度が独立していることを示しています。

新奇性追求(アクセル)と損害回避(ブレーキ)がともに強い人はストレスを感じやすいのです。
ですが、こういった生まれつきもった因子は変えられません。(残念ながら・・・)
逆にいえば、この気質を持っていない人はそのようには生きる事が出来ません。
何が良い、悪い、ではありません。どんな気質にも、プラス、マイナスがあります。
自分のもった因子を知り、それにあった対応を身につける事が、社会で自分を生きやすくしていくことなのだと思います。
パーソナリティ障害を特徴づけている性格の次元の組み合わせ
クロニンジャー博士はパーソナリティ障害を特徴づけている因子として組み合わせを以下のように上げています。
TCIによって測定されるSDの低さとCの低さが人格障害の核をなしています。
また、中程度以上のSDを有していても、Cが低いと人格障害である可能性が増すことが報告されていることから、人格障害に最も関与が高いのがCであり、Cの低さが人格障害の核をなしていると考えられています。
※パーソナリティ障害の人は、自尊心と協調性の両方の因子が低いことが解っています。
気質と性格との相互作用について
クロニンジャー博士は、気質と性格との相互作用を以下のように現しています。

人は経験を概念的に再組織化し、新しい適応的な反応を学習することによって成長すると考えられるのですが、性格とは事故の異なる概念に関連する反応バイアスによって、記述できるとしています。
すなわち、人の行動を自動的に触発、抑制、維持、固着する反応が気質によって当初は決定されているのですが、これらの反応は自己のアイデンティティーの概念の変化によって調節することが出来る。というわけです。
つまり、気質が自己洞察学習行動すなわち性格の発達を動機づけるのですが、それによって性格が変容し、今度は逆に、性格が気質を調節する、と言う事です。
こんな風にパーソナリティーは、気質と性格が相互に影響しあい発達すると考えられています。
参考資料